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ひつじと出逢った。
それがはじまり。
扉は無数にあることを知った。
ひつじはたくさんのことを教えてくれる。
生まれるコト、死ぬコト、生きるコト。
そして、素材の原点であること。
ある日ひつじがこう言った。
「いつかボクはいなくなる。
でもすべてじゃない。
きみに残したいものがあるんだ」 と。
そうして私がひつじから
受け取ったもの。
あたたかなもの。
形にしたいと思った。
ひつじが消えても残るものを。
ウールを着ることはひつじの記憶を身にまとっていること。
例えばセーターになる前のひつじは、どこか遠い国でめーめー鳴きながら、
草原を駆けていたのかもしれない。
とてもあたたかいセーターだったら、
そのひつじは寒い国で暮らしていたのかもしれない。
とてもやわらかいセーターだったら、
そのひつじはおいしい草をたくさん食べていたのかもしれない。
ひつじが私に言った。
「きみがボクを食べたなら、
ボクはきみの一部になってひつじでは
体験できなかったコトをたくさん出来るんだ」 と。

そして私はひつじの力を借りて服を作り始めた。
いつかひつじの毛から仕立てるコトを夢見て。
ひつじはこうも言った。
「もしボクがきみを食べたなら、
きみは人間では体験できなかった
コトが出来る。ひつじとしてね」。

それも悪くないと少し思った。

私はいつも一方的にひつじを想っていて、
春には必ず会いに行ってしまう。
ひつじは私と会ったところで特別喜ぶワケではないし、
帰る時も別れを惜しんでくれるワケでもない。
それが分かっているから 「また来るね」 と
言い残して安心して戻って来れる。

もしも、 ひつじに 「行かないで」 と言われたなら、
私の心は乱れて帰ることが出来なくなるだろう。

うえ